株式会社ジュピターテレコム
Webセールス推進部長
末崎哲弥氏

ケーブルテレビ最大手のJ:COM(ジュピターテレコム)は、ケーブルテレビに加えて、高速インターネット接続、電話を含む放送通信サービスを提供している。2011年7月現在、同社サービスの総加入世帯数は、350万世帯を突破した。項調に加入世帯を増やしてきた同社だが、放送通信サービスをめぐる環境は激しさを増している。
従来、J:COMはドアツードアの訪問販売を初めとする営業活動を武器として業績を積み重ねてきた。しかし、競合が多様化している中、顧客とのコンタクトポイントの強化をめざし、テレビCM放映、ジェイコムショップの全国展開、カスタマーセンターの充実、Webサイトの強化といった方針を打ち出すことになった。
その中で重要性を増してきているのが、マーケティング活動の受け皿としてのWebサイトである。2009年の段階でも同社Webサイトにはサービス内容についての情報が豊富に掲載されていたが、こうした情報提供にとどまらず、顧客獲得チャネルとしてWebサイトをさらに活用することが求められた。また、サービスの申し込みプロセスにおいては、ユーザがWebサイトで必要事.を入力したあと、カスタマーセンターが処理を引き継ぐようになっている。この2つを一元的に扱い、Webサイトでの申し込みが最終的な契約成立に結びついているかどうかを検証し、コンバージョンの向上をどのように行っていくかが課題であった。
2010年7月、J:COMではWebマーケティング体制の刷新に取りかかった。まずは、Web上のオンラインデータと、カスタマーセンターオペレーションのオフラインデータを一元管理し、それらのデータを解析して、その分析結果をもとに改善施策を回していく体制の構築を図っていった。
「私は、特別なことをしているわけでなく、行っていることは実にシンプルです。まずは、課題が何かを見つけ、それを改善するための仮説を作り、実際のアクションを行って仮説を検証し、次につなげていく。この当たり前なことをいかにきっちりできるかが重要だと思っています」
J:COMのWebセールス推進部長、末崎哲弥氏はそう語る。
Webのマーケティングは、データがすべてだ。末崎氏がWebマーケティングの新体制を作り上げるためのパートナーに選んだのは、株式会社アイ・エム・ジェイのMarketing & Technology Labs ™(以下、MTL)だった。MTLは、Data Driven Marketingについての豊富なノウハウを持ち、データプラットフォーム構築やマーケティングROI最大化のためのコンサルティングサービスやテクノロジーサービスに定評がある。
「マーケティングの改善で重要なのは、改善提案を出したら翌週にはそれを実装し、データを集めて検証を行ったら、すぐ次のトライアルにつなげるということ。幅広いレンジに対して、PDCAサイクルを短期間でいかに多く回すか。それが最終的なコンバージョンを向上させることにつながります。」(末崎氏)
J:COMはAdobe SiteCatalystを活用して、Webサイトの解析を進めていった。毎月、メールやリスティング広告といった流入経路ごとの効果測定やユーザのWebサイト内行動の計測を実行。カスタマーセンターなどのデータについてもAdobe SiteCatalystに取り込み、オンラインとオフラインを一気通貫した分析を可能にした。また、Adobe DataWarehouseにより、特定期間において細かなページ要素が最終的なコンバージョンにどれくらい貢献しているのかを測定した。
Adobe SiteCatalystのレポーティング画面は、アクセス解析に習熟していない人間にとってはかなり複雑だが、独自のレポートツールでわかりやすく可視化した。各担当者レベルで目標値を設定し、どんな施策が有効かをマッピングするシートを作成、評価指標についても明確化した。
全体の契約完了率を40%アップさせるのであれば、各担当者がどういう施策を採れば最終的なコンバージョンに結びつくのか、検証はどのように行うのか。データの定量化と明確なシナリオを構築することで、関係者が自然にPDCAサイクルを回せる仕組みを作り上げた。
プロジェクト開始後の半年間で、20個以上の戦略を共同で立案し、それを約80個以上の具体的な施策に落とし込んだ。例えば、総合申込フォームのフロー改善で完了率は約80%アップ、新規申込ユーザ向けのページを改善により申込フォーム進入率は約20%アップしたという。
そして、Webサイト全体におけるコンバージョン率は約35%アップを達成。
J:COMとMTLによる共同プロジェクトがもたらしたのは、Webサイトにおけるコンバージョン率向上だけではない。チームのスタッフの意識にも着実に好影響を及ぼしている。
プロジェクト発足前には、何らかの施策を行ったとしてもそれがよかったのか悪かったのか明確な基準がなく、スタッフもどういう方向に向かっていけばよいのかが不安な状態だった。そのため、成果を増やすためにどのような施策を行っていくかということよりも、単にWebサイトを制作することがメインの業務となっていた。それが今では数値をベースに、自分たちの取り組みについて評価する仕組みが徐々に出来つつある。また、チーム全体のターゲットに対して、現在の進捗状況、加えて各スタッフの担当における進捗状況をチーム全員で共有することで、担当におけるチームへの貢献状況も客観的に把握できるようになってきた。
これらの結果、着実に実績を上げていき、予算達成はもちろん、前年比2桁成長を継続している。
Webマーケティングには魔法の杖などない。末崎氏の発言にもあったように、当たり前のことをこつこつと徹底的にこなし、PDCAサイクルを回すことが結局は早道であり、王道なのだ。
このような好循環を生み出せた秘訣は何か?
「プロジェクトのパートナーといかに信頼関係を結んで、問題意識を共有できるか。これに尽きます。コンサルがうまく行かない事例というのは、お互いのゴールが共有できていないんですよ。MTLさんの役割はコンサルティングというより、パートナーです。同じチームとして、1つのゴールに向かって進んでいるイメージですね。」(末崎氏)
現在、J:COMとMTLは、これまでの地道な改善施策の推進に加えて、より長期視点でどのような成長戦略が描けるか、従来の逆のプロセスでこの長期目標を達成する実行プランも含めて議論をしている。